ウィズの垂れ流し日記

YouTube、読書、音楽、ゲームなど好きなことに関して考えることや感じることをゆる~く語ります。共感してくださる人、趣味が合う人とコミュニケーションを取れる場にしたいです。ゆる~くよろしくお願いします‼

『清楚純情エグゾディア』 【第三回ランダム単語短編】






どうも、ウィズです。







突然ですが出来るだけ毎日更新を心がけようと思い立ちました。

ただ、意識し過ぎると続かなくなるたちなので自分を騙すようにふわ~っとやろうと思います。





ということで本日は
第三回ランダム単語短編です。


最近はやっと書くのが楽しくなってきました。
(色々な本にこれは良いことだと書いてあります...笑)


あ、あと初めて読者さんがついてくださったみたいです。本当に嬉しくてたまらないです!
感謝感激雨霰ってやつです、血沸き肉踊っています。



それでは第三回を始めていきたいと思います。

まだ、第一回、二回をご覧になっていない方は是非そちらもお願いします!






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『清楚純情エグゾディア』







ああ、春が来る。



風がそう感じさせてくれる。

まもなく3月が終わりを告げるころ、所々に新たな命が芽吹き始める。
木々はゆっくりと緑色に染まり、花々は手を目いっぱい広げて太陽を抱擁する。
色とりどりの色彩が陽光にのせられて私の瞳の中で乱反射する。


そして、私は喜びに包まれる。




息子はいつのまにやら5歳になった。
最近は仮面ライダーにどっぷりハマっている様である。

私が仕事を終え家に帰ると
「おかえり」という言葉よりも先に
「変身」という言葉が聞こえ、次の瞬間には私は悪の一味になっている。

息子は私の疲れ切った身体にこれでもかと正義を振りかざすのだ。

そんな息子に対し
「はっはっは、このサラリーマンにそんな攻撃きかぬわ!」
と言いながら襲い掛かる私を見て、妻は微笑んでいる。

こんな我が家の当たり前が私はどうしようもなく大好きだ。





妻と出会ったのは小学校5年生のとき、ちょうど春が訪れてすぐのことだった。


私は当時、「遊戯王」というカードゲームにハマっていた。
私がというよりは、当時の小学生は皆こぞってやっていたのだ。
小遣いが入ると友達と一緒に駄菓子屋に駆け込み全財産を叩いて5枚入りのパックを買った。
今思えば、こんな私でも子供の頃は大胆だったようだ。

友達とはよく公園で遊戯王に興じていた。
家でやると母親に「またそんなものにお金使って」としかられるからだった。

その日も、例外なく近くの公園に友達と集まって遊戯王をしていた。



すると一人の女の子が
「私も混ざってもいい?」と話しかけてきたのだ。
真っ白のワンピースに包まれた真っ白の肌をした、いかにも育ちの良い女の子が遊戯王をやりたいのかと驚愕したことを今でも鮮明に覚えている。


そして、それこそが紛れもなく私の妻である。

後に聞いたところ実は
妻は彼女の兄の「遊戯王の練習相手が欲しい」という欲求から半ば付き合わされるかたちでやり方を教わり、遊戯王を始めたらしい。



結局、私たちは
私、友達、妻の5人で総当たり戦を行うことになった。

私の第一試合の相手は妻だった。

私は正直やる気になれなかった。
妻の見た目から私の勝利を確信していたし、勝ったら勝ったでなんとなく申し訳ない気持ちがあったからだ。


デュエル(試合のこと...懐かしい)が始まった。
土にまみれた汚い私の手とは裏腹に、彼女の手はその先の景色が透けてしまうほどに透き通っていた。
細い指が繊細に扱う遊戯王カードはきっと自らをフランスの貴族がたしなむカードゲームと勘違いしたはずだ。
デュエルが進むほどに私はどんどん彼女の仕草に魅了された。


しかし、予想通り試合の流れは完全に私のものだった。
彼女は美しい手でドロー(山札からカードをひくこと)をしてもあまりフィールドに出すことはなく大切そうに優しく持っているだけだった。

私は、きっとまだいまいちやり方を分かっていないのだろうと思いながら進まない気持ちを押し殺し試合を有利に進めていった。

もう次のターンで私の勝ちが決まる、そう確信しながら彼女のターンになった。



「ドロー」
彼女はか細い声で宣言すると可憐な手つきでカードをひいた。


すると、次の瞬間
彼女は春の空気も嫉妬するほどに美しい笑顔を見せ
「やった」と小さく飛び跳ねた。




そして、小さく白い手に持った手札を
幼子が拾った貝殻を親に自慢するように見せた。






私は美しさのあまりため息をついてしまった。



「そろったの!エグゾディア。」



そこにはエグゾディアがいた。
私がしっているものとは全く違っていた。


均整のとれた筋肉に覆われた身体は強さの中に弱々しい可憐さを覗かせ、
四肢に繋がれた鎖はその美しさ故に神に嫉妬をされたことを思わせた。




脆くもありながら芯のある強さをもったその姿はまさに彼女だった。



「こんなに美しいエグゾディアを召喚できるのは、この世界に彼女を除いては絶対に存在しない。」


そう確信した私はそれ以来
彼女の虜となり結婚に至ったのである。


まったく恥ずかしく信じられない話だが、
これが私たち夫婦の馴れ初めである。
(普段、馴れ初めを訪ねられたときは「元クラスメイト」と嘘をつくようにしている。)





この季節になるといつもこの思い出が私の頭の中に現れる。

そして、その美しい景色にどうしようもなく懐かしくなる。









「おかえり、お疲れ様。」

小さな仮面ライダーを撃退した私に、妻は優しく話しかける。




「あいつもう5歳だよな。小学生になったらやるのかな、遊戯王…」

「そうね、そうだといいわね。」

白く美しい女性はクスッと笑う。





春が嫉妬する音が聞こえた。








『清楚純情エグゾディア』完




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いかがでしたでしょうか。




春っぽい作品になったかなと思います。



書きながらこの家族に嫉妬してしまいました。




ではまた、第四回でお会いしましょう。







ばいばい。